活躍する住民
「とにかく笑ってくれたら、それでいい」学びと笑いを届けて39年。イキイキ会 川田さん・籠谷さん
「女性も、もっと外に出て、いろんなことを学ぼう!」
そんな想いから始まった、芸西村女性団体連絡協議会、通称「イキイキ会」。
毎年12月に開催される「イキイキ会憩いの夕べ」では、身近な話題をユーモアたっぷりに演じる寸劇が大人気。個性豊かなメンバーが繰り広げる舞台は、長年、村の人たちに笑いと学びを届けてきました。
そんなイキイキ会が、今年の公演を最後に、恒例行事「憩いの夕べ」に一区切りをつけることになりました。
今回は、会長の川田さんと副会長の籠谷さんに、これまでの活動や楽しい舞台裏、そして最後の公演に込める想いを伺いました。

本業は農家。気づけば地域のあちこちに
川田さん
本業は農家でナスを作っています。今日も夕方から苗を植える仕事があるんですけど、あまりにもいろんな活動をしているので、周りの人からは仕事をしていないと思われているかもしれませんね(笑)。
今、一番大きい活動が「芸西村女性団体連絡協議会」です。名前が長いので、みんな「イキイキ会」と呼んでいます。子どもが小さい頃にはPTAの会長をはじめ、教育関係の役もいろいろやらせてもらいました。今も地域のさまざまな活動に関わっています。
籠谷さん
私は芸西村生まれです。大学から県外に出て、結婚してからもしばらく県外で暮らしていたんですけど、夫が農業をやりたいと脱サラしたので、30年ほど前に芸西村へ帰ってきました。その頃は、トルコギキョウなどの花を作っていましたね。
イキイキ会に参加したきっかけ
川田さん
先輩からの声がけですね。「出なさい」って言われたら、なかなか断れないでしょう(笑)。
会長になった時もそうなんです。当時の会長さんが退かれることになって、次をどうするかという話になったんですけど、私に話が来た時には、もうほとんど決定事項で。「まあ、やってやれんことはないだろう」という気持ちでしたね。
女性も、家の外に出て学ぼう!
イキイキ会はどのようにして始まった?
川田さん
芸西村は農業が盛んな村ですよね。
昭和の時代、農家の女性たちは、家と仕事が生活のほとんどだったんです。今みたいにいろんなところから情報が入ってくる時代ではないし、家の外に出て勉強する機会も少なかったんですよね。
そんな時に、「これからは女性も男性と同じように、いろんなことを勉強して、もっと社会と関わりを持たないかん」という考えから始まったのがイキイキ会なんです。
籠谷さん
昔は、女性が外に出るというだけでも大変だったんですよ。
何世代も一緒に暮らしている家も多かったですし、出かけようとすると「ご飯はどうするんだ」「また行くのか」なんて言われるような時代でしたから。
川田さん
そうそう。だから、女性が家の外に出る理由があるということ自体が、大きかったんです。
男性は仕事の関係で県外へ視察に行ったりすることもあったけど、女性はなかなかそうはいかなかった。
少しでも外に出て、学んで、笑って、みんなと交流する。
そういう場をつくろうというのが、始まりだったんですね。
勉強だけじゃ面白くない! そこから寸劇が始まった
川田さん
最初は講演会のような、学習を中心とした活動だったそうです。でも、それだけでは面白くないですよね。娯楽も少なかった時代ですから、そこに寸劇を取り入れるようになったんです。
私が関わるようになってからも、村の困りごとや、もっと知っておきたいこと、ニュースで聞いたけどよくわからないことなど、いろんなテーマを取り上げてきました。

画像:2022年「ウイズ/アフターコロナのくらしと防災」 youtubeより

画像提供:イキイキ会
籠谷さん
TPPとか、エシカル消費、ジェンダー、SDGsなんかもやりましたね。介護や防災のことも取り上げました。
川田さん
そういう言葉って、いきなり講演会で聞いても難しいですよね。だから、まず寸劇で「こういうことを勉強するんですよ」と、身近な話に置き換えて紹介するんです。
普通の家庭で、お父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが食卓を囲んで話しているような感じですね。
籠谷さん
まず寸劇があって、その後に食事をしながら交流して、最後に講演会という流れなんです。でもね、寸劇を見て、ご飯を食べたら帰っちゃう人もいるんですよ(笑)。
川田さん
そうそう。劇を見て、ご飯を食べたら、もう終わったと思って帰ってしまう(笑)。
もともとは講演会の内容を分かりやすく伝えるための寸劇なんですけどね。それぐらい劇を楽しみにしてくださっているということなんでしょうね。
最近は講演会だけにこだわらず、みんなで集まって交流することも大切にしています。
出てきただけで笑いが起こる、名女優も!
どんな方たちが出演されるんですか?
川田さん
みんな、それぞれ仕事を持っている普通の女性たちです。農家の人もいれば、お勤めの人もいます。
イキイキ会にはいくつかの女性団体が参加していて、役割もいろいろ。料理を担当する人、会場を準備する人、舞台に立つ人。みんなで協力してつくり上げるんです。
昔は本当に面白い女優さんがいたんですよ。もう亡くなられたんですけど、出てきた瞬間に笑いが起こるような人でね。
籠谷さん
本当に、プロになってもいいぐらいでしたよね。
川田さん
吉本新喜劇じゃないけれど、もう出てきただけでお客さんが笑うんです。私もまだイキイキ会に入る前、一人の観客として見ていた頃から、あの舞台が楽しみでした。
何のテーマだったかは覚えていなくても、劇が面白かったことは覚えているんです。
毎年、12月になるとチケットを買って見に行っていました。「あんな楽しいことをするなら、仲間に入らんともったいないな」と思っていましたね。

画像提供:イキイキ会
おじいちゃん役も、お父さん役も。みんな役になりきる
籠谷さん
寸劇には、イキイキ会の家族が登場するんです。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、娘やお婿さんなど、それぞれ役があるんですよ。
私もいろんな役をやらせてもらいました。女子高生の役もありますし、最近は娘のお婿さん役をしています。
川田さん
おじいちゃん役も女性がやるんですよ。でも、本当におじいちゃんに見えるんです。ちょっとした仕草なんかも自然で、「こういう人、おるおる!」って(笑)。
メイクも自分たちでやっています。お父さん役なら、ひげの剃り跡を表現するために、青いアイシャドウを使ったりするんですよ。
役がリアルすぎて、本物と間違えられる!
川田さん
寸劇には、消防団員や保健師さんなど、いろんな役が登場するんです。
消防団の制服を借りて出演した役場の職員さんもいましたね。あまりに自然なので、本物の消防団員だと思って見ている方もいるんですよ。
保健師さんの役をした時も、「あの人、保健師さんもできるがや」なんて言われたりして。いやいや、保健師さんの役をしているだけなんですけどね(笑)。
それぐらい、みんな役になりきっているということなんでしょうね。
川田さん
役場の新人職員さんにも出演してもらうことがあるんです。
最初はみんな「役場に入って、こんなことをするとは夢にも思いませんでした」って言うんですよ。でも、練習して、お化粧して、衣装を着て、いざ舞台に立つと、お客さんが笑ってくれて、拍手をしてくれる。
終わった後には「来年も出られますか?」なんて言ってくれる人もいるんです。実際に何度か出演した人もいますよ。最初はびっくりしていても、やってみたら楽しくなるんでしょうね。
籠谷さん
台本を考えてくださる役場の担当の方も、すごいんですよ。
以前、おじいちゃんとおばあちゃんの若い頃を振り返る、回想シーンがあったんです。「えっ、舞台で回想シーンなんて、どうやってやるの?」と思いましたね。
川田さん
そうそう。映像じゃないのにね。
籠谷さん
それが、ちゃんと回想シーンになるんですよ。若い頃の役を別の人が演じたりして。よくこんなことを思いつくなあと、感心しましたね。
川田さん
昔は、あらすじだけ書いてあって、あとはアドリブで、という台本もありました。台本も演じる人たちも、みんなそれぞれ個性があるんですよね。

セリフが飛んでも、それも笑いに変えちゃいます
川田さん
本番は12月なので、その1か月ぐらい前から、みんな仕事や家のことを終えて、夜に集まって練習します。最近は出演するメンバーもだいたい決まっているので、お互いの動きや間合いもわかっているんです。
籠谷さん
でもね、最近はセリフを覚えるのが大変で(笑)。
川田さん
昔は台本1冊、全部覚えられたんですよ。それがだんだん覚えられなくなって、拡大コピーして、テーブルの上や舞台の床に貼ったりしています。
みんな、自分のセリフを見えるところに置いているんです。

籠谷さん
それでもセリフが飛ぶことがあるんですよね。でも、誰かがそこに突っ込んだりして、それがまた笑いになったり。
川田さん
そうそう。長年一緒にやっているので、誰かがアドリブを入れても、だいたいどう返してくるかわかるんです。セリフが飛んでも、そのままうまく流したり、別の話でつないだり。
最終的には、それなりにまとまるんですよ(笑)。
籠谷さん
私はお客さんにアドリブで話しかけることもあります。見に来てくれた人も、一緒に楽しんでもらいたいですからね。
「楽しかった!」その一言が、何よりうれしい
川田さん
見に来てくださるのは芸西村の方が中心ですけど、村外から来てくださる方もいます。一度見たら、また来たくなるみたいですね。
講演会の先生が、寸劇を見て「自分たちの話よりわかりやすかったです」と言ってくださったこともありました。それはうれしかったですね。
でも、何かを全部覚えて帰ってもらおうとは思っていないんです。「あ、こないだそんな話をしよったね」と、頭の片隅に少しでも残ってくれたら、それでいい。
来て、ご飯を食べて、楽しく笑って、「今日、面白かったね」と帰ってもらえれば、一番うれしいですね。
籠谷さん
最近は、ご夫婦やお子さんと一緒に来られる方もいます。舞台に向かって「お父さーん!」「お母さーん!」って声援が飛ぶこともあるんですよ。
川田さん
そういうのも楽しいですよね。今は男性も女性も、若い人も年配の人も、誰でも楽しんでもらえる会になっています。
39年続けてきたからこそ、考えたこと
今年の公演で一区切りを迎えることになったんですね。
川田さん
そうなんです。
やっぱり、何でも続けていくというのは難しいですよね。始めた頃のメンバーも、今では70代、80代になっています。若い人が新しく入ってくれればいいんですけど、なかなかそれも難しくて。
昔は先輩に「出なさい」と言われたら、自然に参加するようなところがありましたけど、今は人とのつながり方も変わってきました。
若い世代の人たちにとっては、活動が楽しみというより、負担に感じられることもあると思うんです。
籠谷さん
仕事も家庭もありますしね。
川田さん
以前、お客さんにアンケートを取ったことがあるんです。
「イキイキ会は、これからも続けたほうがいいですか?」って。そうしたら、ほとんどの方が「続けてほしい」と答えてくださいました。
でも、たった一人だけ、「みんなの負担が増えてきたのなら、やめたほうがいい」という意見を書いてくださった方がいたんです。それも、すごく大切な意見だと思いました。
続けてほしいと言ってもらえるのはありがたいです。でも、運営する人たちが無理をして、だんだんしんどくなっていくのでは、続けること自体が難しくなりますよね。
だから、みんなが力尽きてしまう前に、まだ「もうちょっと続けられるのに」と思えるぐらいのところで、一度幕を引こうかと。何年も前から、二人でそんな話をしてきたんです。
39年目は「サンキュー」の年!
川田さん
今年はちょうど39年目なんです。「39年って、サンキューやね」って(笑)。
それに、今年は国民文化祭の開催年でもありますから、ちょうどいい節目になるかなと思ったんです。
今年の「イキイキ会憩いの夕べ」は、12月3日(木)に開催します。

最後の公演では、芸西村の歴史や文化などを取り上げる予定です。詳しい内容は、まだこれから。見てのお楽しみですね。
籠谷さん
最後だからといって、特別に構えず、いつものように楽しんでもらえたらいいですね。
川田さん
そうですね。笑ってもらえて、「よかったね」「楽しかったね」と言ってもらえれば、それでオッケーです。
幕は下ろしても、女性たちのつながりは続いていく
川田さん
今回終わるのは、「イキイキ会憩いの夕べ」という行事なんです。イキイキ会、つまり女性団体連絡協議会そのものをどうするかは、まだ決まっていません。
団体を一度なくしてしまうと、また新しくつくるのは大変ですからね。今の形の行事は終わっても、団体は残しておきたいなと思っています。
また何か新しい取り組みをしてほしいという声が出てくるかもしれませんし、自分たちが「こんなことを学びたい」「これをやってみたい」と思うことが出てくるかもしれません。
その時には、またみんなで集まって、わいわい楽しくやれたらいいですよね。
40年近く前と今とでは、暮らし方も、情報の集め方も、人とのつながり方も変わりました。だから、これからはこれからの時代に合った形で。
女性たちが集まって、学んで、笑って、楽しめる。
そんなつながりは、これからも大切にしていきたいですね。

【取材後記】
お二人のお話は、最初から最後まで笑いがいっぱい! 次々と飛び出す楽しいエピソードに、こちらまで笑顔になり、元気をいただいたインタビューでした。
農業や家庭、地域での活動など、いくつもの役割を担いながら、長年、村の人たちに笑いと学びを届けてきた女性たち。その明るさとたくましさに、何度も感心させられました。
「とにかく、みんなが笑ってくれたらそれでいい」。最後の公演も、いつもどおりみんなで笑って楽しい時間を過ごしてほしい。そんなお二人の想いがとても素敵でした。