活躍する住民
アイデアが降りてきた瞬間、バーッと動き出しちゃうんです。 芸西村教育委員会 岡村さん
芸西村で開かれる、さまざまな学びの場やイベント。
講座を考え、人を集め、地域にいる人と人をつなぐ。時にはシナリオを考え、チラシまで自分でつくる。
その裏側で、長年、生涯学習に携わってきたのが、芸西村教育委員会事務局の岡村まきみさんです。
「ある日突然、降りてくるんですよ」そう笑いながら話す岡村さん。
思いついたら、人に会いに行く。お願いする。まず、やってみる。そうして生まれた小さな“きっかけ”が後輩に引き継がれ、今では芸西村を代表する取り組みに育ったものもあります。

0歳から、一生涯。学ぶことに関わる仕事
現在のお仕事について
生涯学習に携わる仕事をして、もう14年くらいになります。
生涯学習って、0歳からずっとなんですよ。生涯にわたって学び続けるということで、その中には学校教育も社会教育も家庭教育もあって。子どもから大人まで、本当に幅広いです。
放課後の子どもたちの居場所づくりがあったり、大人向けのものづくりや講座があったり、高齢者教育、人権、文化芸術とか。いろんなことがありますね。今は人権教育や文化祭などを担当していますけど、一番いろいろやっていた頃は、イベントもたくさん担当していました。
作品展や生涯学習の振興大会、伝承館まつり。それからコミュニティ・スクールを立ち上げたり、日本語サロンを立ち上げたり、人材バンクをつくったり。結構、ぎゅぎゅっとやっていた時期がありましたね。
「ゼロから作るのが、楽しくて仕方ない」
いろいろな企画をされていて、大変だと感じることは?
大変……あんまり思ったことないですね(笑)。
人を集めるのは大変ですけど、どうやったら住民の皆さんに参加してもらえるかなってまず考えます。
ターゲットを決めて声をかけたり、いろんな媒体を使ってみたり。その時その時で、「今だったら、こんなことに興味があるんじゃないかな」って考えるんです。
芸西村の野菜のレシピを作ろうという話になった時も、子どもにも見てもらえるようなものにしたいと思ったんです。普通の紙一枚のレシピじゃなくて、ちょっと絵本みたいな感じにしたら面白いって手に取ってもらえるんじゃないかなって。
そこからキャラクターを作ったりして、どんどん広がっていきました。最初は一つのレシピ本だったものが、そこからまた違うものにつながっていく。そういうのが面白いんですよね。

他にも、子どもたちがYouTuberになりたいっていう時代があった時には、動画編集を習ってYouTubeに上げてみよう、みたいな講座もやりました。
その時のホットな情報に乗っかるというか。そういうアンテナは張っているかもしれないですね。
でも私、ゼロから作るのが楽しくて仕方ないんですよ。提案したことをどんどん取り組ませてもらえたことは、すごくありがたかったですね。
「ある日突然、降りてくるんですよ」
アイデアは、どこから出てくるんですか?
降りてくるんですよ。ある日突然、降りてくるんです(笑)。
「これ、こうした方がいいんじゃない?」って、ピンとくる。
そういう時って、夢中になってすごい短時間でパーッと仕上がっていくんですよ。不思議なんですけど、短時間でできたものって、結構うまくいくんですよね。
無理かな?と思うことでも、「これをやりたい」と思ったら、情熱的にアプローチしてみる。そうすると突破できた経験が何度かあるんです。
琴ヶ浜で「これをやりたい」
その一つが、琴ヶ浜で始めた取り組みでした。60周年の時に何かやろうということになって、せっかくやるんだったらクリエイティブなものがいいなと思っていたんです。
その頃、テレビで熊本の竹灯りのクリエイターの方を見て。「この人に来てもらいたい」と思って、すぐに調べて、連絡しました。予算も無かったですけど(笑)。
実際に琴ヶ浜を見ていただいて、「ここでやりたいんですけど、どうでしょう」って。
そこから地域づくりのワークショップとして、小さく始めました。
最初は本当に少ない本数からです。地域のおっちゃんたちにも竹を切ってもらって、みんなでつくって。灯りがついた時は本当に感動しましたね。
それが現在の「竹灯りの宵」という大きなイベントにつながったんです。私はきっかけをつくっただけで、その後、いろいろな方たちがブラッシュアップして、どんどん育ててくれました。それがうれしいですね。
昔から、どんどん動くタイプでしたか?
いや、全然ですよ。
小さい頃から絵を描いたり、芸術的なことは好きで、ものづくりはすごく好きだったんです。でも、人前で話したり、発表したりするのは苦手で。いつも泣きそうな感じでした(笑)。
でも、仕事をしていたら、どうしてもやらないといけないじゃないですか。
人生って、帳尻が合うと思うんですよ。今まで避けてきたことが仕事になったりするので(笑)。
人前で話すことも、仕事だからやらないといけない。それを繰り返しているうちに、ちょっとずつ成功体験が重なって、「なんか、できるかも」みたいな気持ちになっていったんでしょうね。
自分がワクワクしないと、参加する人も楽しくない
企画をするときに大事にしていることは、まず自分がワクワクすること。例えば何か教室を企画するとしても、担当している自分が楽しんでいなかったら、参加者も絶対楽しくないと思うんです。
「これ、面白そう」「やってみたい」そう思えるものを考えるのも好きですね。出来るだけ新しいことに挑戦して、真っ白なところから形にしていく。そういうところにも、すごく喜びを感じます。

きっかけをつくったら、そこから誰かにつながっていく
生涯学習って、きっかけをつくることなのかなと思います。
最初はそんなに興味がなかった人でも、来てみたら「めっちゃ楽しかった」と思ってくれるかもしれない。一回体験した人が、「もっと続けてやりたい」と言ってくれたら、「じゃあサークルを作ろうか」となることもあります。
実際に、体幹トレーニングの講座からサークルにつながったこともありました。そういうきっかけを与えられるのは、楽しいですよね。
人がいないと、地域づくりはできない
地域づくりって、人づくりだと思っているんです。どれだけハード面が充実していても、そこに人がいないと地域も組織も続いていかない。
芸西村は、すごい人であふれています。いろんな技術や才能を持った方がいるんですよ。その人材を把握しておきたいと思って、人材バンクを立ち上げたこともあります。
村歩きのガイドもそうです。
ごめん・なはり線に乗っていると、手結山のトンネルを抜けたところで景色がパッと開けるでしょう。すごくいい場所なのに、「この区間だけガイドがない」と言われて。「えー、それはいかんろう」って(笑)。それで、いろんなところに聞いて、ガイドを立ち上げました。
実際に人材バンクをつくってみると、登録していない人の中にも、すごい人がたくさんいるんですよ。特にシニア層のパワーがすごいんです。「こんな芸達者な人がいるんだ!」って驚きました。
私は今、セカンドステージに足がかかっているので、今度はそういう人たちがお役に立てるようなことをしたいなと思っています。
日本語を学ぶだけじゃない、日本語サロン
日本語サロンを立ち上げたこともあります。
芸西村には外国の方も多く暮らしています。ベトナムやインドネシア、中国、カンボジアなど、アジアの方が多いですね。日本語を勉強することももちろんですけど、どちらかというと地域交流の意味もあって。
ゴミ出しのルールを伝えたり、防災のことを話したり、道路標識のことを学んだり。それぞれの国の料理を一緒につくったこともありました。
日本語ボランティアも募集したんですけど、「絶対集まらん」と思ってたんですが、10人くらい来てくださって。「えーっ!」って驚きました。
30代から70代くらいまでの方が来てくれて、講座もちゃんと受けてくださって。そういう人が地域にいるということを知るのも、面白いですよね。
よさこい高知文化祭2026
今はこの秋に開催される「よさこい高知文化祭2026」に力を入れています。芸西村でもいろんなイベントを予定しています。
資料館が30周年なので絵画展をやったり、ウクレレの演奏者の方をお呼びしてワークショップをしたり。伝承館まつりや生涯学習の振興大会、イキイキ会の劇など、いろんな催しがあります。
イキイキ会では、企画だけじゃなくて、シナリオも作っています。チラシもCanvaという画像ツールを使いながら、色を変えたり、素材を選んだり、「こっちの方がかっこいいかな」と考えながら作っています。
今回の文化祭を通して、芸西村に昔からある文化や、海などの自然の魅力をたくさんの方に知ってもらえたらと思っています。
昔ながらのものも、今の子どもたちにとっては逆に新しかったりしますよね。「こんなものが芸西村にあったんだ」と、芸西村を再発見してもらえるような機会になったらいいですね。
琴ヶ浜を「ウクレレの聖地」に
今、やってみたいのは、地元の方も大好きな琴ヶ浜を「ウクレレの聖地」にすることです。
海ってウクレレの音色が似合うと思うんですよ。琴ヶ浜で波音と一緒にウクレレを楽しむ。そこが一瞬でハワイみたいになるでしょう(笑)。楽器を小脇に抱えて、琴が浜で奏でる人がたくさん来てくれたらいいですね。

「芸西村が大好き」と思ってくれたら
これまで、たくさんの子どもたちと関わってきました。
その子たちが、この芸西村を大好きだと思ったまま大人になってくれたらいいですね。
そして、たくさんのことを経験して、いつかここに帰ってきて、地域のために何かできる人になってくれたら。
たとえ村を離れていたとしても、ふるさと納税のような形で村のことを忘れずにつながってくれたらうれしいです。
文化資源や誇れる文化歴史があるこの村は、交通の便も良くなり、「程よい田舎」だと感じます。
そんな芸西村が、豊かで穏やかに過ごせる村であればいいなと思っています。

【取材後記】
「ゼロから作るのが、楽しくて仕方ないんです」とバイタリティあふれる笑顔で話す岡村さん。
きっかけをつくったものが、次の人の手に引き継がれ、さらに大きく育っていく様子を見守り、喜ぶ姿も印象的でした。
芸西村で当たり前になっている風景の中にも、もしかすると岡村さんの「あ、これやってみたい!」から始まったものが、まだまだ隠れているのかもしれません。