活躍する住民
地域と学んで、「できた!」を増やしていく。 芸西小学校 近藤校長先生
芸西村の子どもたちが通う、芸西小学校。
教室で学ぶだけでなく、ピーマン農家さんを訪ねたり、自分たちで育てたお米について調べたり、地域のお店をもっと盛り上げる方法を考えたり。学校の外にも飛び出しながら、子どもたちは芸西村の人や産業に触れ、自分たちで考え、伝えることを学んでいます。
「子どもの中には、“学びたい”という気持ちがあるんです」そう話すのは、芸西小学校の近藤校長先生。
子どもたちの「やってみたい」をどう引き出し、「できた」という自信につなげていくのか。芸西小学校で大切にしている学びや、子どもたちへの思いを伺いました。

芸西小学校に赴任して
最初の印象は?
子供たちが 素直だな、のびしろがあるなと思いました。先生のこともすごく好きなんだなって。
先生たちも子どもたちに何かを押し付けるというより、「みんなでやっていこう」という空気がもともとあったのかなと思います。
先生との距離もすごく近いんですよね。「自分のことを分かってもらいたい」と思って、先生にアプローチしているような印象でした。
「やりたい」という気持ちもとても感じたので、その気持ちをどう学びにつなげていくか。そこは大事にしたいと思いました。
地域に出ると、学びがどんどんつながっていく
芸西小学校では、地域と関わる総合的な学習をたくさんしています。
例えば3年生は、芸西村のハウスに行って、実際に作物に触れるところから始めています。
今年はピーマンの引き上げの時期にハウスへ行って、たくさん収穫させてもらい、持って帰って家で食べたり、みんなで配ったりしました。
そこから、保護者や地域の方と一緒にトラップを作って、ハウスに仕掛けて、回収して、どれくらい虫が取れたのかを調べたり、農家さんと話をして、「こんな思いでやっているんだ」「こんなことに気をつけているんだ」と学びを広げていきました。
今度は知ったことを新聞やムービーにしたり、お礼のお手紙を書いたりして、自分たちなりの方法で表現していくんです。体験して終わりじゃなくて、そこで感じたことや知ったことを、自分の言葉で誰かに伝えていく。
そうすると、国語の「話す・聞く・書く」も入ってくるし、社会も算数も入ってくる。いろんな教科がつながってくるんですよね。

芸西村そのものが、学びの場
その他の学年も地域と関わりながらいろんなことを学んでいます。
5年生は、お米について学習しています。
田植えや稲刈りをするだけじゃなくて、「芸西村のお米って、どんなお米なんだろう」と調べたり、ふるさと納税のことを知ったり。自分たちで収穫したお米を炊いて、おにぎりにしたりもします。
そこから、「お米といえばお味噌汁だよね」となれば、米味噌と麦味噌を比べたり、出汁との組み合わせを考えたり。芸西村のお米を使ったポン菓子のアイデアも出ています。一つの入り口から、どんどん広がっていくんです。
6年生は、「かっぱ市をもっといろんな人に来てもらえる場所にできないか」と考えています。「芸西村のグミを作ったらどう?」とか、「自分たちでリーフレットを作ろう」とか。
子どもたちから、いろんなアイデアが出てくるんです。地域には、学びにつながる材料が本当にたくさんあります。
去年は6年生が防災についてのムービーを作りました。高知弁を使いながら、自分たちが学んできた防災のことを伝える内容で、最後は「ほいたらね」で終わるムービーなんですが、防災ムービーのコンクールで入賞することができました。
こんなふうに、体験したり調べたりしたことを自分たちなりの方法で表現することも大切にしています。

「やりたい」は、子どもの中にある
学校づくりで大切にしていることは?
やはり、学ぶ意欲ですね。子どもが「やりたい」と思うことを、一緒に考えていく。
私は、子どもの中にはもともと「学びたい」というものがあると思っているんです。
小さい子って、がむしゃらに遊ぶでしょう。それと同じで、子どもの中には「やってみたい」「知りたい」というものがある。それをどう引き出していくかだと思っています。
ただ「これをやりなさい」と言われてやるのと、「これをやってみたい」と思ってやるのとでは違いますよね。
45分の授業の中に、10分でも15分でも自分が「やりたい」と思えることがある。やりたいと思ったらやるし、やったら「できる」が生まれる。その積み重ねが大事なんじゃないかなと思います。

「どうせ言っても無理」と思わせない
子どもの発想って面白いんですよ。
例えば以前、収穫したお米が残っていたときに、子どもたちから「おにぎりを作ろう」と声が出て。離任式の日だったんですけど、みんなでご飯を炊いて、熱々のお米を「あちち」って言いながら握って、塩おにぎりにして食べたんです。
そういう「やってみたい」に対して、先生も「じゃあ、やろうか」と言ってくれる。そこがいいんですよね。
子どもに「どうせこれを言ってもダメだろうな」と思わせない。もちろん、何でも好きなようにやればいいということではありません。小学生なので、先生が仕掛けを作ったり、学んでほしいことへうまくつないだりすることも必要です。でも、子どもの「やりたい」という気持ちは大切にしたいと思っています。
先生も一緒に、ワクワクする
先生方も楽しみながら取り組む。それはすごく大事だと思います。先生が嫌々やっていて、子どもが楽しいわけがないですから。
先生自身が「こうしたらもっと分かるんじゃないかな」「こうしたら子どもが楽しいんじゃないかな」と考える。うまくいかないときには、「困っています」と言える。
先生たちも学び合えるような空気が大切だと思っています。子どもに「学んだことを表現しよう」と言うなら、先生たちも学んだことを伝え合う。大人も子どもも一緒なんですよね。

「できない」ではなく、「ここはできた」
一つの教室の中にも、いろんな子がいます。
すぐに20個見つけられる子もいれば、一つ見つけるのに時間がかかる子もいる。でも、一つだったとしても、自分で見つけたということが大事なんです。
「自分は一つ見つけられた」と思えるのか、「何もできなかった」と思って45分を終えるのかでは全然違う。
人と比べる必要はないんですよね。その子が「ここはできた」と思えること。それを積み重ねていくことが、自信につながっていくと思っています。

芸西村だからできる学びがある
芸西小学校の子どもたちは、地域の方と関わる機会が本当に多いです。農家さんに教えてもらったり、自分たちの活動を地域の方に伝えたり。
そこで「ありがとう」と言ってもらえたり、自分たちがやったことを喜んでもらえたりする。そうすると、「自分たちにも何かできるんじゃないか」と思えるんじゃないかなと思います。
地域が子どもたちを認めてくれている。それは、芸西村だからこそできることの一つだと思います。

自分を諦めないでいてほしい
私は、幼い時に自信をつけてほしいと思っています。小学校の段階で、「これは、できる」と思わせたい。自分を諦めないっていうことが、その子を作っていくと思うんです。
「自信」という言葉になるのかもしれないけれど、私の中では、「諦めない」という感じの方が強いのかな。自分っていうものを、諦めないでいてほしい。
人と比べたら、きりがないじゃないですか。それぞれに、その子自身が持っている強みがある。その強みは、人と比べる必要は全くないと思っています。
「これ、できるよね」って誰かに言ってもらえたり、自分自身がそれを「強み」だと思えたり。そういう気持ちを、小学校の時にどれだけ持たせてあげられるかだと思っています。
学校って、すごいところなんです。私は本当にすごいところだと思っています。
入ってきたら字が書けるようになって、計算ができるようになって、お友達との関係も覚えていく。
一緒に遊んで、ご飯を食べて、音楽をして、体育をして、絵も描いて。
小学校って、とにかく総合的ですよね。
苦手なことがあったとしても、その子ができるようにやり方を変えることもできます。
例えばリコーダーだったら、穴を押さえるのが難しい子には道具を使ったり、楽譜を簡単にしたり。全部を同じようにできることだけが大事なんじゃなくて、その子ができるところで、一緒にやれるようにしていく。
そういうことも学校ではできると思っています。
【取材後記】
次から次へとアイデアが飛び出す、パワフルな近藤先生。
一方で、校内に飾られた子どもたちの掲示物を紹介してくださるときの優しい表情もとても印象的でした。
子どもたちのために「いい」と思ったことは、どんどん取り入れてみる。
その行動力の真ん中には、いつも子どもたちがいるのだと感じました。
一人ひとりの「やりたい」を、「できた!」へ。
芸西小学校の学びが、ますますイキイキと感じられました。