活躍する住民
妥協しない。その先に「美味しい」がある。 喜ら功 吉良一作さん・加奈子さん
お弁当に、お惣菜、おにぎり、卵焼き。朝早くから、次々と料理が並ぶ「喜ら功」。
お店を切り盛りするのは、吉良一作さん・加奈子さんご夫妻です。
お米の炊き方ひとつにも、何年も試行錯誤。
卵焼きは銅板で一つひとつ手焼きし、人気の唐揚げはニンニクの種類まで徹底的に選ぶ。
お二人のお話を聞いていると、「そこまでやるんですか?」と思わず聞いてしまうこだわりが次々と出てきます。
先代から受け継いだ味を大切にしながら、自分たちらしい工夫を重ねる吉良さんご夫妻に、お弁当づくりへの想いや芸西村での暮らしについて伺いました。

お米屋さんから始まった、お弁当屋さん
加奈子さん
このお店は、もともと主人のお母さんが始めたんです。主人のお父さんが米穀店をやっていて、お米の自由化などもあって、これからお米屋だけではやっていけなくなるということで、お弁当屋を始めたそうです。
「喜ら功」という名前にも、先代のお母さんへの想いが入っているんですよ。
お母さんの名前が「あつ子」で、「喜ら功に来たら、お店も喜ぶし、あつ子も喜ぶ」みたいな意味で付けたそうです。
美味しいご飯へのこだわり
加奈子さん
もともとがお米屋なので、ご飯にはやっぱりこだわっています。一等米を使っているのですが、お米の価格が上がっている中でもそこだけは妥協したくないんです。
一作さん
炊き方も、ずっと研究してきました。お米の質によって水の量も全然違うんですよ。
この仕事に入って18年くらいになりますけど、最初の頃は本当にトライアンドエラーの繰り返しでした。
何のお米を使えば美味しく炊けるのか、水はどのくらいがいいのか。ずっと試しながらやってきて。今はガス釜で一気に炊き上げて、蒸らす時間もきちんと計っています。


一作さん
日替わりのメニューを考えるのは、全部家内です。私はもう、ひたすら味付けして作る。「今日はこれをこうして」って指示をもらって、忠実にやっています。
加奈子さん
私は先代のお母さんからたくさんのことを教えてもらいました。
その日の食材や在庫を見ながら、お客様が飽きないように考えて。野菜もなるべく入れるようにしています。芸西村や近隣で新鮮な野菜が手に入るので、それを日替わりのお弁当に入れられるのは、うちの強みだと思っています。
朝の仕込みは何時から?
一作さん
だいたい朝1時半くらいからですね。
加奈子さん
お店は朝6時からです。
もともと先代のお母さんがお店を始めたとき、現場仕事に行く方やトラックの運転手さんたちに、お腹いっぱい食べてもらいたいというところから始まっているんです。
朝早くから始まることが多いお仕事なので、お店も昔から早く開けていました。以前は5時半くらいに開けていたこともあったんですよ。今でも朝6時のオープンを待ってくださる方がいて、軽トラックが並んでいることもあります。
芸西村は農家さんも多いので、農作業が忙しい時期になると、朝早くからおにぎりやお稲荷さんなどを買いに来てくださる方もいます。
一作さん
早く開ければ開けるだけ、お客さんが来るんですよ(笑)。

おすすめは、唐揚げと卵焼き
これはぜひ食べてほしい!というおすすめは?
一作さん
定番は、やっぱり唐揚げですよね。唐揚げと卵焼きじゃないですか。

唐揚げの味は、ニンニクひとつも妥協しない
加奈子さん
うちの唐揚げ、ニンニクがめちゃめちゃ効いているんです。結構、衝撃的な味だと思います(笑)
一作さん
一度、使っていたニンニクを他のものに変えたら、お客さんからものすごく言われて。
「これはいかん」となって、メーカーさんのニンニクを何十種類も全部持ってきてもらったんです。それを一個一個、全部食べ比べました。もう気持ち悪くなるくらい(笑)。
それで、「これやー!」って。今の味に落ち着きました。
卵焼きは「バージョン5.0」
一作さん
卵焼きは、先代のレシピをずっとアップデートしてきた感じですね。バージョン1.0から5.0ぐらいまで(笑)。
加奈子さん
銅板を使って、店長が全部焼いています。甘みがちょっと強いので、強火で一気に焼かないと焦げてしまうんです。テクニックが必要なので、店長しか焼けないんですよ
ごまかしがきかないように、オープンキッチン
一作さん
新しい店舗にするとき、オープンキッチンは絶対条件でした。
加奈子さん
前のお店もオープンキッチンだったんです。ごまかしがきかないように、「真剣勝負」みたいな感じですね(笑)。

作ったものを美味しい状態で食べてもらうために、[瞬間冷却器]も入れました。
調理したものを一度しっかり冷やして、作りたての味を閉じ込めるようにしています。お弁当は、いつ食べてもらえるか分からないので、なるべくできたての味を味わってもらいたいんです。もちろん衛生面でも大切なことですね。
業者さんに、「個人のお弁当屋さんでこの設備を入れるのは珍しい」って言われるんですけど、それでも入れたかったんです。

思い出の味
子どもの頃の思い出の味は?
一作さん
鶏肉の甘酢ですね。母親が作ってくれたやつで、子どもの頃、お弁当にもよく入れてもらっていました。今でもたまに作りますよ。
甘酢が自家製で、いろいろ配合して作るんですけど、究極のレシピがあって。……それが本当に美味しいんですけどめっちゃ面倒くさいんですよ(笑)。
加奈子さん
面倒くさいって言うんですけど、本当に美味しいんです。前は日替わりにも結構入れていたんですけど、鶏肉も調味料も値段が上がって、なかなか入れられなくなってしまって。
一作さん
でも、これは食べてもらいたいくらい本当に美味しいですね。
加奈子さんの、思い出のお弁当は?
加奈子さん
私はサンドイッチですね。
母が、サンドイッチをくるくる巻いて、リボンをつけてくれて。女の子だから、かわいいものが好きだったんですよね。それがすごくうれしかったのを覚えています。サンドイッチもすごく美味しかったです。
今度は私が娘のお弁当を作る立場になって。「おいしい、おいしい」って食べてくれるのは、やっぱりうれしいですね。
東京から来て気づいた「新鮮さ」という贅沢
加奈子さん
私は東京出身で、主人と結婚して芸西村に来ました。最初は「田舎だなー」って感じました(笑)。
でも、一番びっくりしたのが野菜の美味しさ。きゅうりって、こんなにパリパリしてるんだ!って。
今思うと、新鮮なものを普通に食べられることが、ここならではの贅沢なんですよね。東京ではいろんな料理が食べられるけど、「素材」となると、やっぱり全然違うなと思います。
芸西村は「みんなで子育てしている」感じ
加奈子さん
芸西村は子育てしやすい環境だと思います。
地域のみんながつながっていて、みんなで子どもを見てくれている感じがあるんです。「あれ、どっかおらんけど?」ってなっても、「あそこにおったよー」って誰かが教えてくれる。
主人にそっくりな息子なんて、「あんた吉良の子やろ」ってすぐ分かるみたいで(笑)
本当に、みんなで子育てしているような感じがあります。

先代の味を大切にしながら、時代に合わせて
一作さん
これからは、時代を見ながら、そのときに合わせて臨機応変にやっていけたらと思っています。
加奈子さん
今って、みんな毎日忙しいじゃないですか。
そうすると、どうしても食事がおろそかになってしまうこともあると思うんです。
そんな中でも、なるべく手作りにこだわって、地元の野菜を使って。少しでも手作り感のある、安心して食べてもらえるお弁当を提供できるお店であり続けたいです。
先代から受け継いだものも大切にしながら、目の前のことをコツコツ続けていきたい。
ご飯がおいしいと、それだけでホッとするじゃないですか。
そこを大事にしていきたいですね。

【取材後記】
深夜1:30から始まる仕込み。お米の炊き方を何年も試し、唐揚げに使うニンニクを何十種類も食べ比べ、卵焼きは銅板を使って一つひとつ手で焼く。お話を聞くほどに、「美味しい」のために惜しまない手間に驚かされました。
そして印象的だったのが、お二人の掛け合い。一作さんがこだわりを熱く語る隣で、加奈子さんが笑顔で言葉を添える。加奈子さんが話せば、一作さんがまたひと言。そんなやりとりから、長年一緒にお店を切り盛りしてきたお二人の関係が自然と伝わってきました。
こだわるところは、とことんこだわる。でも、お二人で話しているとどこか楽しくて、あたたかい。その空気もきっと、喜ら功のお弁当のおいしさのひとつなのかもしれません。