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手にした人が、ふわっと笑顔に。その瞬間がうれしい。ブルースター農家・谷岡さん

空色の小さな星のような花、「ブルースター」。
芸西村を代表する花のひとつで、爽やかな淡い青色と星形の可愛い花弁が魅力です。

ブルースターの農家さんで、ブルースター部会の部長も務める谷岡さんに、ブルースターのこと、芸西村への想いを伺いました。

実は「ブルースター」は通称

ブルースターについて教えてください。

もともとの名前は「オキシペタラム」という花なんです。南米原産の花で、5枚の青い花びらが星みたいに見えるので、「ブルースター」と呼ばれるようになったんだと思います。

今はブルースターという名前が浸透していますけど、市場では「オキシ」と呼ぶことも多いですね。

芸西村では、ピュアブルーやオルキブルー、花が少し大きいエンジェルとエンジェルホワイトなど、いくつかの品種を栽培しています。オルキブルーは、ピュアブルーより少し色が濃くて、ちょっと紫がかったような色ですね。

実は、オルキブルーという名前を付けたのはウチの親父なんですよ。土佐弁の「ここにおるき」のオルキです(笑)ピュアブルーも名付けたそうです。僕が子どもの頃から、家ではずっとブルースターを作っていましたね。

芸西村で育ってきた、青い花

芸西村でブルースターの栽培が始まったのは、かなり前です。

最初の頃は、ブルースターは水揚げがあまり良くなくて、茎もひょろひょろした感じだったんです。そこから品種改良をして生まれたのが「ピュアブルー」です。水揚げが良くなって、茎もしっかりした花になりました。それで「自分もつくりたい」という農家さんが増えていったんですね。

今、ブルースター部会は8戸くらい。定期的にみんなで集まって、最近の生育状況を話したり、それぞれのハウスを見て回ったりしています。困っていることや栽培のことを話して、情報交換する感じですね。

僕は今、部長なので、取材の対応をしたり、市場へ挨拶に行ったり、県外へ勉強に行く時に代表として参加したりすることもあります。

小さな苗から、約50〜60日

何年か前までは夏場は7月後半くらいから植えていたんですけど、ここ最近の暑さの影響で調子が悪くなることもあって、少しずつ植える時期が後ろにずれてきています。

暑すぎると、ブルースターの青い色が抜けて白っぽくなったり、根もうまく張らなかったりすることがあるんです。だから最近の暑さは、なかなか大変ですね。

植えてから最初の花が採れるまでは、だいたい50〜60日くらい。それまでは水や肥料、温度管理、それから消毒ですね。花の場合は、出荷する時に虫がいないことが前提なので、そこはかなり気をつけます。

朝3時。花がきれいなうちに切る

切り始める時期になると、うちは朝3時くらいからハウスに入ります。遅い人でも4時くらいには入っていると思います。

昔から、まだ光合成が始まる前に切ると花がきれいだと言われていて。本当かどうかは分からないですよ(笑)。で
も、朝のまだ温度が低い時間の方が、青い色も鮮やかなんです。

切った後は、水揚げ剤に何時間つけるとか、出荷までの作業も決まっています。そこから逆算すると、日の出までにはだいたい切り終わりたい。一日に多い人だと5,000〜6,000本。うちでも4,000〜5,000本くらい切ることがあります。(画像:ピュアブルー・谷岡さん提供)

一度切ったら終わりではなくて、切ったところの横からまた脇芽が出てくるので、そこから次の花を採ります。
9月頃から始まって、11月、12月、2月、3月、4月、最後は6月頃まで。植える時期などにもよりますけど、一つの株から何度か収穫していきます。

全部終わったら畑を一度リセットして、また次のシーズンに向けて準備します。

19年の会社員生活から、農家へ

僕はもともとサラリーマンだったんです。高校を卒業してから19年くらい働いていました。ちょうど早期退職のタイミングがあって、その時に会社を辞めて、農家を継ぎました。

サラリーマンの時も、自分がやったことが成果になって評価されるというのはあるんですけど、やっぱり会社なので、全部が全部、自分に返ってくるわけではないですよね。

農業だったら、自分でやったものがそのまま自分に返ってくる。失敗しても自分の責任だし、成功しても自分。良くも悪くも、結果が自分に返ってくるんです。そういうところもあって、「やってみようかな」と思いました。

農家になって、家族との時間も変わった

農家になって良かったところのひとつは、自分で時間をつくれることですね。
子どもの運動会だったり、部活の試合だったり。平日に予定が入った時でも、自分で仕事を調整して時間をつくることができます。

夏の今みたいな時期は、朝5時くらいから仕事をして、暑くなる前に終わります。
親父とお母さんは8時くらいには撤収して、僕も水やりなんかをして、遅くても9時半くらいには終わります。

午後ですか?部屋でNetflixです(笑)。嫁さんとジムへ行ったり、買い物へ行ったりもします。暑い時期の昼間は、ゆっくりしていますね。

「こんなんばっかり作りたい」

僕ら農家って、実際に花を買ってくれるお客さんとは、ほとんど会わないんですよ。
だから、自分で誰かにブルースターをあげた時に、

「わあ、ありがとう」
「ブルースターや。可愛らしいね」

って、ふわっと表情が明るくなる。そういう時は、やっぱりいいですね。
花屋さんで自分たちのブルースターを見つけることもあります。その時に、お客さんが花を見ながら「この花がいい」って手に取る瞬間を見るとうれしいです。

冬になって気温が下がってくると、青い色もすごくきれいに出ます。
たくさん切っている中で、「これ、いいな」っていう花があるんですよ。そんな花を見ると、
「こんなんばっかり作りたいな」って思いますね。

ブルースターの「ここを見てほしい」

やっぱり、まずは色ですね。自然の青い花って、そんなに多くないんです。

ブルースターは単品で飾ってもいいし、花束の中に入れてもいい。ちゃんと存在感はあるんですけど、ほかの花をあまり邪魔しないんですよ。それから、匂いがほとんどなくて、花粉も出ない。だから食卓に置いても、料理の邪魔をしにくいと思います。

長く楽しんでもらうなら、茎を切った時に出てくる白い液をきれいに洗い流してあげるといいですよ。あれが残っていると水を吸いにくくなってしまうので、水を替える時にきれいにしてあげる。それだけでも違うと思います。

ブルースター部会の部長として

部長だからって、そんな堅苦しくしたくないんですよね。

県外の市場の方だったり、他の作物を作っている農家さんだったり、芸西村へ視察に来てくれる方がいるんですが、そういう人たちに、いかに楽しんでもらうか。そこですかね。飲み会とか(笑)。楽しんで帰ってもらいたいですね。

「いいものを、いい時に届ける」

これから挑戦していきたいことは?

新しい品種については、親父が今もちょこちょこやっています。色の濃いものだったり、成長の早いものだったりを選んで、掛け合わせたりしていますね。

ただ、僕としては、まずは安定していいものを出荷すること。それが大事だと思っています。

ブルースターは害虫がつくと商品にならないですし、花が濡れると色が赤っぽくなってしまうこともあります。そういうものを出さないようにする。

そして、いいものを、いい時に届ける。

今は8戸くらいでつくっていますが、どうしても出荷の時期が重なったり、逆に欲しい時に数が少なかったりすることもあります。部会全体として、できるだけ波がなく、安定して出荷できるようになるのが一番かなと思っています。

花言葉は「信じ合う心」

奥様にブルースターをプレゼントしたことは?

それがなかったんですよね。
妻と付き合っていた頃は まだサラリーマンでしたから。

花言葉の「信じ合う心だよ」って、渡しておけばよかったんですけど(笑)。残念ながら、その頃はまだ農家じゃなかったので。

これからの芸西村への想い

子どもは少なくなりましたね。僕が小学生の頃は、学校に300人、400人くらいいたと思うんですけど、今は100人くらいですよね。だから、もう少し若い人たちが住んでくれたらいいなと思います。

地域の行事も、昔に比べるとだいぶ少なくなってきています。僕も神祭なんかには参加していますけど、昔からあるお祭りや地域の行事が、もう少し盛り上がっていったらいいですよね。そのためにも、やっぱり子どもや若い人が増えてほしいなと思います。

後継者については、ブルースター部会では息子さんやお孫さんが始めたところもあって、なんとなく次につながっているところが多いですね。

僕は子どもに「農家をしなさい」とは言わないです。僕自身、もともと農家をするつもりじゃなかったですから。
でも、農業を続けられるようには残しておく。それで、いつか嫌になったら帰ってきてやればいい。

それくらいでいいかなと思っています。

【取材後記】

取材のために、芸西村のブルースターの歴史や品種、出荷についてまとめた資料まで用意してくださった谷岡さん。お話を伺った後には、「暑いですよ」と言いながら、ハウスの中も案内してくださいました。

そこには、まだ小さなブルースターがずらり。これからぐんぐん伸びていく姿も可愛らしく、少し早く育った株には、もう小さな青い星のような花が咲いていました。

「冬の朝3時。電照に照らされたブルースターは本当に美しいですよ」という言葉に、とてもロマンティックな気持ちになりました。 (画像:オルキブルー・谷岡さん提供)

今度ブルースターを見かけたら、その小さな青い花の向こうにある芸西村のハウスを、少し思い出してもらえたらうれしいです。