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「今日は、堀田さん、おる?」って来てくれる場所で。芸西村文化資料館 堀田 幸生さん

資料館の入口で、笑顔で迎えてくれる堀田さん。堀田さんの説明を聞いていると、資料館にある物が一気に輝きだすようで興味が湧いてきます。
資料館を支える一方で、木工作家として、木育インストラクターとしても長年活動を続けてこられたそうです。
今回は、ものづくりへの思いや芸西資料館との出会い、企画展へのこだわりなどについて、お話を伺いました。

ものづくりを通して、伝えたいこと

バードカービングから木育インストラクターへ


娘の誕生日プレゼントを作るため、雑木でバードカービングを始めて30年ほど続けています。
東急ハンズが主催している「ハンズ大賞」で3等になったこともあります。

バードカービングって、木の皮を残したまま鳥を彫る作品なんです。色は塗らずに、焼きゴテで焦がして線を入れていくんですが、木の皮を残しているから木が持つ表情がそのまま羽根になるんです。

今までに130種類くらいの木で作ってきたので、皮を見たら木の種類がだいたい分かりますよ。

どうして木の皮を残そうと思われたんですか?

人と同じことをしても面白くないでしょう。
最初はいろいろ試しましたけど、木の皮を残した方がその木らしさが出る。それが自分らしい作品になると思ったんです。

ものづくりの教室も長く続けられていますね

そうですね。バードカービングだけでも年に10回以上やっていて、今までに1万人以上の方に教えています。
ものづくり全体ではメニューが80種類くらいあるんです。去年は62講座を開催して、参加者は全部で2,100人くらいでした。

多くの方が参加される理由は何でしょうか?

どうでしょう(笑)。
でも、私が教えたいのは鳥を作ることじゃなくて、子供たちに「ナイフの使い方」を覚えてもらいたいんです。
今は危ないからって使わせないことが多いでしょう。でも、安全に使えるようになることの方が大事なんです。

ちゃんと持ち方を教えて、力の入れ方を教えて。そうすると、自分で削れるようになる。作品はその結果としてできるものですね。完成した時の顔を見ると、やっぱり嬉しいですね。

芸西村文化資料館との出会い

こちら働くことになったきっかけは?

前の仕事を辞めて、一年くらいぶらぶらしてたんですよ。そしたら家内が『ぶらぶらするより日銭を稼いできなさい』って(笑)。ちょうど資料館の欠員募集があったので面接を受けました。気が付いたら11年ですね。

最初に資料館に来た時の印象は?

びっくりしました。展示より何より、バックヤードですよ。30年以上集めた民具や資料が積み重なっていて、どこに何があるのか分からない状態でした。これはまず片付けんといかん、と思いましたね。

毎日ひたすら整理して、一年目は体重が4キロ減りました(笑)。でもね、片付けていたら面白いものがどんどん出てくるんです。

片付けが企画展に

面白いもの

そう。『これ、面白いやん。』そう思ったら企画展の開催です。また片付けたら『これもある。』また企画展(笑)。

だから特別に新しいものを集めたわけじゃないんですよ。昔からここにあった資料なんです。私が来て10年で100回以上の企画展を開催しました。

資料館は、新しいものを買わないと展示ができないわけじゃない。眠っている資料をどう見てもらうか。そこが一番面白いところやと思っています。

リピーターさんも多いですよ。次々に新しい企画展があるから「ここは穴場や」って言う人もけっこういます。

宝物がたくさん!

はい。いろんな方が貴重な物を持ってきてくれます。

例えば、昔、高知市にあったジャズ喫茶の方からSPレコードをたくさんいただいて、今は1800枚のレコードがあるんです。ジャケットの写真を撮って、メーカー別、ジャンル別、歌手とか作曲者とか、データベースをこしらえて。3回くらい企画展をやりました。

資料館は、歴史の皿鉢料理やと思う

展示を考える時に大切にしていることは?

資料館っていうたら、『歴史を勉強するところ』いうイメージがあるでしょう。でも、私はそうじゃないと思うんです。

ここはすごいものがたくさんある、いわば「歴史の皿鉢料理」なんです。皿鉢料理って寿司があって揚げ物もあって煮物もある。メインがどっさりあって自分が好きなものを食べるでしょう。私は資料館も同じやと思っています。

人それぞれ興味は違いますから、『全部見てください』じゃないんです。ひとつでも、『これ面白い』と思うもんを見つけてもらえたらえい。そこから『もうちょっと知りたい』と思うてもらえたら、それで十分です。

「資料館へ行く」じゃなく「堀田さんのところへ行く

地域の子供たちとの関わり

保育園や小学校にもよう行きます。卒園する子どもには、一人ずつバードカービングをプレゼントしています。『この鳥を机へ置いちょったら宿題が早う終わるぞ』って言うて渡します(笑)。

資料館へ来た時も、『字が上手になったね。』『大きゅうなったね。』とかそんな話をします。
保護者の方が、『今日は資料館へ行こう。』じゃなくて、『今日は堀田さんのところへ行こう。』言うて連れて来てくれることもあります。それが一番うれしいですね。

これからの資料館について

ここへ来た人に『面白かった。』『また来よう。』そう思うてもらえたら、それで十分です。資料は見てもらわんと意味がない。倉庫へしまい込んで終わりじゃなくて、みんなに見てもらって、知ってもらって、楽しんでもらう。そのために企画展をやっています。

まだまだ面白いものがいっぱいあります。だから何回来ても、新しい発見がある。そんな資料館でありたいですね。

芸西村文化資料館の詳細はこちら

【取材後記】
次から次へと出てくる堀田さんのお話に、気がつけばこちらまで「もっと聞きたい!」と引き込まれていました。

眠っていた資料を「面白い」に変え、人と人をつないでいく堀田さん。
「資料館へ行こう」ではなく、「堀田さんのところへ行こう」と訪れる人がいるのも、なんだか納得です。

「今日は堀田さん、おる?」そんな声が聞こえてくる芸西村文化資料館へ、ぜひ一度足を運んでみてください。