活躍する住民
ふたつの目線で見つめる芸西村のあした ~後編~
前編では、岡村さんと津野さんが芸西村役場で働くまでの歩みや、仕事への向き合い方を伺いました。
後編では、二人が携わるふるさと納税の仕事を中心にお話を伺います。
岡村さんが語る「ふるさと納税は、あくまでも手段」という言葉。その考えに最初は戸惑いながらも、
事業者や寄附者とのつながりを深めている津野さん。二人の話から、芸西村が目指す姿を探ります。

ふるさと納税の仕事とは?
ご担当者として「ふるさと納税」とはどのようなお仕事だと感じていますか
岡村さん
私の中では、ふるさと納税は目的じゃないんです。あくまでも手段なんですよ。
このまま人口が減っていったら行政も今までと同じやり方では立ち行かなくなる。だから、人や物、お金がちゃんと地域の中で動く仕組みをつくらないといけない。ふるさと納税は、そのための一つの手段です。寄付を集めることだけが目的ではなく、芸西村の新しい可能性を広がるきっかけになればいいと思っています。
農業以外にも稼げるしくみを
芸西村は農業が盛んな村ですし、その強みはこれからも大切にしていかなければならないと思っています。
一方で、新しく挑戦したい人たちが同じ形で農業を始めることは簡単ではありません。
だからこそ、農業を大切にしながら、それ以外にも地域の魅力を生かして新しい仕事や仕組みをつくることが必要だと思っています。
ふるさと納税も、観光も、そのための選択肢の一つです。村にある資源をどうつなぎ、どう生かしていくか。その視点を持ちながら仕事に取り組んでいます。
津野さん
私は興味はあって返礼品などを調べてはいましたが、実際に寄付をしたことはなかったんです。自治体が何のために取り組んでいるのかも、あまり考えたことがなかったです。
行政の仕事の中で「稼ぐ」という考え方にも最初は戸惑いました。ふるさと納税が自分にとって何なのか、今もまだはっきりした答えは無いんですけど。
でも日々の業務の中で、寄付者さんから問合せの電話をいただいた時に「ありがとう」「美味しかった」と言ってくださる方もけっこういて、嬉しく感じる場面があります。事業者さんともお話する機会が増えて、名前を覚えてくださったり、返礼品の案もたくさんくださったりしてありがたいと思います。

仕事を始めた頃よりも、事業者さんとの距離が近くなってきたことを実感していますし、一緒に芸西村を盛り上げていきたいという気持ちも強くなっています。
岡村さん
ふるさと納税の仕事って、行政の仕事の中でもすごく特殊ですよね。
決まったことをこなすだけじゃなくて、自分のアイデアや発想を生かせる仕事だと思っています。
津野さん
特殊・・・たしかに思っていた公務員じゃない人がいっぱいいます(笑)
芸西村に親しみを持ってもらうために
津野さん
先日、富士吉田市に視察に行ったんですが、富士吉田市には富士山のアイコン的なものがあって、そういうのがすごく良いなって思ったんです。芸西村にも親しみやすいマークみたいなものがあったらもっと広めやすいと思うんです。観光にしても、ふるさと納税にしても。
芸西村に親しみを感じてもらえると思うので取り入れていきたいです。
岡村さん
富士吉田市は富士山だったけど、ウチだったら何だろう。ハウスかな(笑)
そういうブランディングから始めていかないと。お金をかけなくてもできることはいっぱいある。封筒のデザインを変えるとか。
津野さん
はい、昨年取り入れようと考えていました。返礼品の段ボールデザインなども。
若い人にも親しみをもってもらえるようにアイコンを考えていきたいです。
寄付者さんへ送る物に芸西村の子供たちが描いた絵やメッセージを使えないかという案もあります。
いろいろな見せ方ができるのではと考えています。
岡村さん
津野さんがやっている、ふるさと納税の特設サイト。これも実績だね。
外から来たからこそ見えた、芸西村の日常
お二人が思う、芸西村の魅力とは?
岡村さん
どこやろう。地元にずーっと住みゆうき難しいな(笑)
津野さん
海が好きでいろいろな海へ行くのですが、やっぱり琴ヶ浜はとても美しいなと思います。
防波堤もなくて左右に大きく広がっていて。夕陽もすごくきれいですよね。よく見に行きます。
野外劇場のところの四角いフレームの先に海が見える景色もいいですよ。
去年、竹灯りの宵のイベントの片付けの時、海がキラキラしていてすごく感動しました。
思わず片付けしていたのを置いて写真を撮ったくらい。(画像:津野さん撮影)

一同「素敵な写真!」
岡村さん
僕はその時、疲労感でいっぱいやった(笑)それが30代と50代の差やね。
僕が感じる芸西村の良いところは、冬寒くないところ。ハウスで温められているせいか湿度もあるし心地良い。逆に夏暑すぎるけど(笑)
あと、人は元気やね!農家さんとか本当に馬力ある。
地元にずっと住んでいると、海は日常の景色になりすぎていて普通に思っていたけど、津野さんや村外の方が「海がきれい」って話してくれるのを聞くと、そんなにきれいに見えるのかって。
その魅力に改めて気づかされるところはあります。たしかに、琴ヶ浜って、『日本の白砂青松100選』や『日本百名月』にも選ばれているんですよね。
海はもちろん、芸西村には、農業やホテル、ゴルフなど、それぞれに強いものがある。
ただ、それらが横につながらず縦のままで終わっている。それをどうつなげるかを考えることが必要だと感じています。外から来た人の視点が入ることで、自分たちが見落としていたものに気づける部分もあると思います。
「芸西村で育って良かった」と思える未来へ
これからどんな芸西村になってほしいと思いますか。
岡村さん
これから物価も上がっていきますし、行政も今まで以上に厳しい時代になると思います。
その中でも「芸西村に住んでいて良かった」と思える村であってほしい。そして、自分の子どもたちが「芸西村で育って良かった」と思える村をつくることが、私たちの役割だと思っています。
以前、小学生に『芸西村のお米を使った商品を考えてみよう』という取り組みをしたことがあるんです。
子どもたちって、大人では思いつかないような発想を持っているんですよ。だから、面白いアイデアがあれば、村としても応援したいと思っています。
役場だけで考えるんじゃなくて、事業者さんや地域の皆さん、それから子どもたちも一緒になって芸西村を盛り上げていけたらいいですね。」
津野さん
イベントでも、ふるさと納税でも、「楽しかった」「また来たい」と思ってもらえることが一番です。
そして、何かを見たときに「あ、芸西や!」と思ってもらえるものを少しずつ増やしていきたいです。
まだやりたいことはたくさんありますが、自分にできることから一歩ずつ形にしていきたいと思っています。
【取材後記】
今回のインタビューでは「地域づくり」という言葉を何度も耳にしました。お二人が見つめていたのは制度や数字だけではありません。
地域で暮らす人とのつながり、事業者との信頼関係、そして村で育つ子どもたちの未来。そうした日々の積み重ねが、芸西村らしさを形づくっていることが伝わってきました。
岡村さんは長年この村を見つめてきた立場から、津野さんは外から来た視点で。それぞれの歩みは違いますが、「芸西村をもっと多くの人に知ってもらいたい」という思いは共通しています。その思いがこれからどのような形になっていくのか、今後も楽しみです。