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言葉では伝えきれない想いを、花に託す。それって素敵だなと思うんです。tomoni flower 橋田 智彰さん 橋田ひとみさん 水野奏音さん
誕生日や記念日、お祝いの日。そして、何でもない日にも。
大切な人に花を贈るとき、そこにはきっと、言葉だけでは伝えきれない想いがあります。
「tomoni flower(トモニフラワー)」は、そんな一人ひとりの想いに寄り添いながら、花を届けているお店です。
芸西村で育てられたブルースターやダリアなど、高知の花の魅力を県内外へ発信することにも力を入れています。
今回は、橋田智彰さん、橋田ひとみさん、水野奏音さんに、花の仕事への想いや芸西村の花の魅力についてお話を伺いました。

花が好き、というより「花を贈ること」が好き
お花の仕事を始められたきっかけは?
橋田智彰さん
25、26歳の頃だったと思います。それまではデザインに関わる仕事をしていたんですが、自分で仕入れて、加工して、販売して、受け取った人の表情が直接見られるような仕事がしたいなと思っていたんです。
当時は神戸に住んでいて、たまたま近くの生花市場で求人があったのが、花の世界に入るきっかけでした。その後、神戸や大阪で結婚式場に併設された花屋に勤めて、婚礼装花の仕事を10年近く経験しました。高知で花屋を始めたのは2013年からですね。
お花のどんなところに魅力を感じましたか?
橋田智彰さん
実は、もともと花がものすごく好きだったというわけではないんですよ。仕事で花に携わるうちに、どういうときに人は花を贈るんだろうって考えるようになって。母の日だったり、好きな人へのプレゼントだったり、普段はなかなか言えない感謝の気持ちを伝えたいときだったり。
言葉では伝えきれない想いや、言葉以上の気持ちを伝えたいときに、人は花を贈るんだなって。それって、すごく素敵なことだと思ったんです。
だから僕は、花そのものが好きというよりも、「花を贈る」という行為や、その意味合いが好きなんだと思います。

橋田智彰さん
結婚式って、人生の中でも特別な一日ですよね。
会場を花で飾って、新郎新婦や参列された方に喜んでもらえる。その日の記憶に残る空間をつくることは、すごくやりがいがありました。
ただ、素敵なお客様と出会っても、結婚式の仕事だけでは次にお会いする機会ってなかなかないんですよね。もっと日常の中でも、お客様の人生に関わっていけたらいいなと思うようになりました。
結婚式だけでなく、誕生日や記念日、何でもない日にも花を贈る。
そんな習慣を提案したくて、高知で花屋を始めたんです。
「ともに幸せになる」から生まれた、tomoni flower
店名にこめた想いとは?
橋田智彰さん
「ともに幸せになる」という考え方から名付けました。神戸にいた頃、知人を通じてその言葉に出会って、すごくいいなと思ったんです。
最初は記号を使ったロゴも考えたんですけど、誰にでも読んでもらえる名前にしたくて、アルファベットの小文字で「tomoni flower」にしました。花を通じて人と人がつながっていく、そんな動きのある名前にしたかったんです。
でも最初の頃は「ともみフラワー」ってよく間違えられましたね(笑)。
お仕事で大切にされていることは?
橋田智彰さん
まずは、一つひとつの注文に対して、そのときの自分の100%を出すことですね。もちろん、こちらが一生懸命考えてつくったものでも、お客様のイメージと少し違うことはあると思います。でも、ただ言われたとおりにつくるだけじゃなくて、どうしたらもっと喜んでもらえるかなって考えて、毎回何か工夫をしたいんです。
期待を超えられることもあれば、うまくいかないこともある。でも、そこから次につながっていくと思っています。今は僕だけでなく、ひとみさんや奏音さんにも、どんどん任せるようにしています。それぞれが考えて挑戦しながら、お客様に喜んでもらえる花を届けていけたらいいなと思っています。
「センスは、知識の総量」
橋田智彰さん
大学時代に色彩を学んだとき、先生から教わった言葉があるんです。
「センスは、知識の総量」。
それを聞いて、センスって生まれ持ったものだけじゃないんだなと思いました。いろいろなものを見て、勉強して、知識や技術を積み重ねていく。それがセンスにつながっていくんだと思います。
でも、知識がたくさんあればいいというだけでもないんですよ。例えば、その花をどんな場面で贈るのか、受け取るのはどんな方なのか。そういう条件をどれだけ考えられるかも、とても大切なんです。
お客様から注文を受ける時もできるだけ、どんな方に贈られるのかを聞くようにしています。受け取る方の好みもありますが、贈る方にも「こういう花を贈りたい」という想いがありますよね。その両方を大切にしたいんです。
それに、季節の花を入れることで、あとから写真を見返したときに「あの頃だったな」って思い出してもらえるかもしれない。贈る人、受け取る人、そしてそのときの季節や場面。いろいろなことを考えながら、花を選んでいます。

お客様の反応で、印象に残っていることは?
橋田智彰さん
花をお渡しした瞬間に、ぱっと表情が明るくなると、やっぱり嬉しいですよね。
でも最近は、その瞬間だけじゃなくて、その後もつながっていけることが嬉しいんです。
例えば、プロポーズの花を注文してくださった方が、結婚式でも花を頼んでくださったり、その後の結婚記念日やお子さんが生まれたときにも来てくださったり。お客様の人生のいろいろな場面に、花を通して関われることが嬉しいですね。
橋田ひとみさん
私は、Instagramなどで、実際にお花を贈っている場面を見られると嬉しいです。
以前、奥様に花を贈られた方の動画を見たことがあって。私たちがつくった花が、こんなふうに贈られて、喜んでいただけているんだなって。
花をお渡ししたあとの様子って、普段はなかなか見られないので、そういう場面に触れられるのは嬉しいですね。
芸西村の花、それぞれの個性が響き合う美しさ
橋田智彰さん
例えばダリアは、花が大きくて、咲き方も華やかなので主役になりやすいですね。
でも僕は、何か一つだけが目立つよりも、花同士がうまく調和していることが大切だと思っています。ダリアも、他の花とどう組み合わせたら魅力が生きるのか。そこに工夫のしがいがありますね。
以前は日持ちが難しい花でもありましたが、品種改良や生産者さんの努力によって、品質も向上していますね
ブルースターは、主張が強い花ではないかもしれません。でも、ほかの花と相性がよくて、組み合わせ方によっていろいろな表情を見せてくれます。
例えば、ブルースターを目立たせたいなら、花が小さめのものや、自然な雰囲気のグリーンと合わせるといいですね。色の組み合わせでも、ブルーとイエローを合わせたり、淡い色合いでまとめたりすると、ブルースターの美しさが生きてきます。
花にはそれぞれ役割があって、ラインをつくる花、形や個性を出す花、全体をつなぐ花、グリーンなどがあります。ブルースターは枝分かれして咲くフィラーフラワーとして、花と花を自然につないでくれる存在でもあるんです。

人も同じかもしれませんけど、長所もあれば短所もある。目立つことが長所になる場合もあれば、主張が強すぎることもある。それぞれの良さをどう生かして、全体として調和させるか。そこがおもしろいところだと思います。
花の向こうにいる、生産者さんの想いを知る
橋田智彰さん
芸西村の生産者さんは、本当に研究熱心な方が多いと思います。
品質や品種にこだわって、長年努力を積み重ねてこられた方がいらっしゃいますし、生産者さん同士のつながりも強いですね。他の産地や生産者さんからも学んで、いいものを取り入れようとされている。そういう姿勢が、芸西村の花の魅力につながっているんだと思います。
スタッフにも生産者さんを訪ねて実際に花が育っているところを見たり、話を聞いたりしてほしいと思っています。
どんな土地で、どんな人が、どんな想いで育てているのか。そういう背景を知っている方が、より奥行きのある花束をつくれると思うんです。ただ花を仕入れて使うだけじゃなくて、その花のことを自信を持ってお客様に伝えられるようになってほしいですね。
橋田ひとみさん
私は、実際にどんな状態で花が育っているのかを見てみたいです。生産者さんが栽培するときに気をつけていることや、花を長持ちさせるための工夫なども聞いてみたいですね。
水野奏音さん
私は、生産者さんが花づくりを始めたきっかけや、その花に対する想いを聞いてみたいです。どういう気持ちで育てていらっしゃるのか、そういう背景も知りたいなと思っています。

芸西村のふるさと納税返礼品として
箱を開けた瞬間から、花を楽しんでもらうために
橋田ひとみさん
寄付者さんとは、お届けする日程についてお電話でやり取りすることもあります。そのときに「すごく楽しみにしています」と言ってくださる方もいらっしゃるんです。
ご自宅に飾られるのか、贈り物なのか、お仕事場に飾られるのか。お話の中でそういうことが分かると、実際に花をつくるときにも、その場所やお客様のことを思い浮かべるようにしています。
定期便をご利用いただいている方から、「前回すごくよかったから、今回は別のものにしてみたよ」と言っていただいたこともあります。そういうお声をいただくと、本当に嬉しいですし、また頑張ろうって励みになります。
毎月届く花を楽しみにしてくださっている方には、季節の移り変わりも感じていただきたいですね。花だけでなく、ラッピングの色や素材にもこだわって、季節感を楽しんでいただけるようにしています。
水野奏音さん
直接お顔を見ることはできませんが、届いたときに喜んでいただけるように、季節のお花やペーパーの組み合わせを考えています。
橋田智彰さん
遠方へ送るときは、冬場でも冷蔵便を使っています。箱の中で花同士が擦れたり、傷ついたりしないように、花の配置にも気をつけています。
特に繊細な花は、箱の外側に当たらないように内側に配置したり。花束をつくるときから、箱に入れて届けることまで考えています。
ただ、どれだけ丁寧につくっても、輸送中の揺れや衝撃で花が傷んでしまうことがあるんです。だから、折れやすい花や花びらが傷つきやすいものは、花束の外側ではなく、少し内側や低い位置に配置するようにしています。花同士が当たらないようにしたり、箱の高さに収まるように、最初から長さを考えたり。
見た目の美しさだけでなく、届いたときにいい状態であることも大切なんです。初回には花瓶をお付けしたり、毎回、花を長く楽しんでもらうための栄養剤を入れたりしています。
でも、本当はまだまだできることがあると思っています。例えば、今回使った花の名前や生産者さんのこと、花束のテーマ、長持ちさせるためのお手入れ方法。
そういうことをもっと伝えていけたら、受け取った方も、より思い入れを持って楽しんでいただけるんじゃないかなって。箱から取り出すときの注意点なども、きちんとお伝えしていきたいですね。
「届けて終わり」ではなく、その先へ
今後、取り組んでいきたいこと
橋田智彰さん
お客様の声を、もっと聞けるようにしていきたいですね。今は、花をつくって送るところまではできていても、そのあとどうだったのか、十分に聞けていないと感じています。
例えば「今回はこういう想いでつくりました」とお伝えして、「次はこんな雰囲気がいいな」とリクエストをいただけるようになったら、もっといいですよね。
一回きりではなく、前回より今回、今回より次回と、より喜んでいただけるものを届けていきたい。お客様との関係も、もっと深めていきたいと思っています。
水野奏音さん
私は、ブルースターの魅力をもっとたくさんの方に知っていただきたいです。

橋田智彰さん
奏音さんは、小学生の頃からブルースターが好きだったんですよ。
僕は、スタッフみんなが高知の花の魅力を伝えられるようになってほしいと思っています。その中でも奏音さんには、ブルースターのアンバサダーのような存在になってほしいですね。
水野奏音さん
芸西村のブルースターやトルコギキョウなどの魅力を、高知県内だけでなく全国の方にも伝えていきたいです。
私たちの活動を通じて、生産者さんにも喜んでいただけたら嬉しいですし、他のお花屋さんにも刺激になって、みんなで高知の花を盛り上げていけたらいいなと思っています。
それから、お花屋さんって、初めて入るときは少し緊張する方もいると思うんです。スタッフにも親近感を持っていただいて、気軽に相談に来てもらえるようなお店にしていきたいですね。
ブルースターの海に浮かぶ、秋の月
インタビューの最後には、実際に花束をつくるところを見せてくださいました。
取材に伺ったのは9月。もうすぐ敬老の日ということで、テーマは「敬老の日の贈り物」です。
「今回はブルースターを主役にして、秋らしさも感じられる花束にしたいですね」そう話しながら、次々と花を選んでいきます。

まずは、花束の輪郭や方向性をつくる花。そこに、表情を生み出す花や、全体をつなぐグリーンを重ねていきます。「この花は存在感が強いから、少し控えめにしようかな」
「ブルースターをきれいに見せるには、ここに持ってくるといいですね」
一本一本の花に役割があり、色にも形にも理由がある。
説明を聞きながら見ていると、何気なく選んでいるように見えた花たちが、少しずつ一つの世界をつくり始めます。橋田さんのイメージは、ブルースターの青い海に、秋の月が浮かぶような風景。
月を思わせる黄色い花を添え、秋らしい色や形を重ねていくと、涼やかなブルーの中に、あたたかさが生まれました。「おじいちゃんとおばあちゃんがいて、そこに子どもたちもいて。家族みんなで囲んでいるような、にぎやかな感じになったらいいなって」花束の中に、贈る相手の姿や家族の時間まで描かれていくようです。
仕上げのラッピングも、花束づくりの大切な工程。包むペーパーや網目状の素材、セロファン、リボンまで、色のトーンを合わせて選んでいきます。
「ペーパーの組み合わせでも、花の見え方が全然違ってくるんですよ」最後のリボンが結ばれると、そこには秋の優しさと華やかさがあふれる、美しい花束が完成していました。


次々に選ばれた花が、まるで魔法のように一つの景色になっていく。
その様子を見て、橋田さんが話してくださった「調和」という言葉の意味が、少し分かったような気がしました。

みんなで、芸西村のブルースターポーズ!
【取材後記】
「センスは知識の総量」「大切なのは調和」。
橋田さんのお話には、花を美しく見せるための技術だけでなく、贈る人、受け取る人、そして花を育てた生産者さんへの想いが詰まっていました。
ひとみさんの寄付者さん一人ひとりに寄り添う心配りや、奏音さんのブルースターへのまっすぐな想いも、とても印象的でした。
最後に見せていただいた花束づくりは、まさに魔法のような時間。美しい花束が完成したとき、その花に込められた物語まで一緒に受け取ったような、あたたかな気持ちになりました。