Follow us

特集

FEATURE

「困っちゅう?ちょっと待って。なんとかするき」 さん・さん高知 小松さん

カフェと放課後等デイサービスを運営する「さん・さん高知」。
子どもたちの成長を支えるとともに、地域とつながるさまざまな取り組みを行っています。

今回お話を伺ったのは、管理者であり児童発達支援管理責任者の小松さん。
子どもたちのこと、お母さんたちのこと、地域のこと。
「ちょっとでも助けられたら」という想いから、いろいろな取り組みが広がっています。

「パートやったらいいかな」から始まりました

働き始めたきっかけを教えてください

前職は保育園で園長をしていました。一度仕事を辞めて家にいた時期に、たまたまこちらで保育士を探しているという話があって。「パートやったらいいかな」くらいの気持ちで始めたのがきっかけです。

それが今は……全然パートじゃないですね(笑)。
子どもたちのこともやるし、事務もするし、送迎も行くし、カフェにも入ります。今日もお皿を洗ってました(笑)。できることを手伝っていたら、いつの間にかこんなことになりました。

子どもたちの「その子らしさ」を見ながら

放課後等デイサービスでは、小学生から高校生までの子どもたちを預かっています。発達に特性のある子どもさんたちなので、それぞれに合わせた支援を考えています。

私たちが特に大事に成長させたいと思っているのは、コミュニケーションや協調性です。小さな集団で遊んだり、行事を取り入れたり。今日と明日は夏祭りをやっていて、ゲームで遊んだりしています。

小学生から高校生まで一緒にいるので、異年齢の交流もあります。上の子たちが優しくて、下の子の面倒を見てくれたりとか、学校では見せないような姿を見せてくれることもあるんです。

中には、広い場所が苦手な子もいれば、視界にいろいろ入ると気が散ってしまう子もいるので、パーテーションで空間を分けて、レゴの部屋、パズルやブロックの部屋など、それぞれが落ち着ける場所を作っています。
子どもたちの様子を見ながら、職員みんなで少しずつ過ごしやすい環境を作り上げてきました。

「できた!」の小さな変化を、見逃したくない

子どもたちと関わっていて、やりがいを感じる時は?

やっぱり、「できる」が増えたときですね。
苦手だったことができるようになったり、人が苦手だった子が「行ってみる」って言ってみたり。そのちょっとの変化が、すごくうれしいんです。

職員にも、「そこを絶対、見逃さんようにしようね」って、いつも言っています。

ちょっと我慢できたとか、自分の気持ちを言葉で伝えられたとか。本当に小さなことかもしれないけど、その子にとっては大きな一歩なんですよね。

例えば、お友達と関わっていて手が出そうになってしまう子もいます。
そんなときも、ただ怒るんじゃなくて、「どうして腹が立った?」「何が嫌やった?」って、一緒に掘り下げていきます。

話を聞くと、子どもたちはちゃんと分かっているんです。
「叩いたらいかんかった」「口で言わないかんかった」って。

そういうやり取りを何度も繰り返していくうちに、
「前やったら叩いちょったけど、今日は我慢できた」って、自分から言えるようになってくる。
「それ、それ!できたね」って、一緒に喜びます。

子どもの成長を、お母さんとも一緒に喜びたい

私は保護者の方と話すこともすごく大事だと思っています。
なので事務ばかりじゃなくて、できるだけ現場に足を運んで、子どもたちの様子を見るようにしています。

送迎にも行きます。送迎に行ったらお母さんとお話ができますよね。
「今日はこんなことがありましたよ」とか、「こんなことができましたよ」と報告したり。逆に、お家での様子を聞くこともできます。「家では野菜を食べないのに、ここでは食べてるんですか?」みたいなこともあります(笑)。

そうやってお互いの様子を知りながら、子どもの成長を一緒に喜びたいんです。
子どもとのつながり、保護者とのつながり、職員とのつながり。やっぱり私は、信頼関係を大事にしたいですね。

ここに来ている子どもたちには、ずっとデイサービスを利用するというよりも、できるならその先へ進んでいってほしいと思っています。
小学生だったら、中学生になったら部活をして、学校の仲間と一緒に楽しんでほしい。
大学に行ける子は大学に行ったらいいし、仕事に就ける子は社会に出てほしい。

そのために今、コミュニケーションや、自分の気持ちをコントロールすること、人とのやりとりを少しずつ経験してほしいと思っています。人と人とのやりとりって、社会に出たときにすごく大事ですから。私もその成長をしっかり見届けたいと思っています。

ここを卒業した後も、中学校の先生から「頑張りよるよ」って様子を聞くこともありますし、用事で学校へ行ったら声をかけてくれる子もいます。大人になっても声をかけてくれたりも。それは、うれしいですね。

地域の人が来られる場所に

カフェメニューは、お手頃な価格です

理事長が「儲けようと思ってない」って言ってました(笑)。

カフェを始めた背景には、地域の方が気軽に来られる場所をつくりたいということに加えて、将来的に就労継続支援B型の事業所として就労の場につなげていけたら、という理事長の想いがあるんです。
パンやクッキーを作ったり、カフェに関わったり。職員がサポートしながら、利用する方と一緒に仕事ができるようになったらいいですよね。

最近はカフェのリピーターさんも増えてきました。SNSで紹介してくださる方もいて「気になっていたんです」と来てくださる方もいます。

カフェだけじゃなくて、月に4回写経教室もやっています。参加される方もだんだん増えてきました。
カフェも、写経教室も、キッチンカーでの販売も、地域の方との交流につながっていると感じます。

子ども食堂

キッチンカーで、かっぱ市や地域のイベントに参加して、お団子やパンやクッキーを販売したりしています。納涼祭やイベントにも声をかけていただくようになりました。

第2土曜日には子ども食堂もやっています。
調理をする職員が農家さんなのでピーマンを持ってきてくれたり、かっぱ市へ買い出しに行ったり。そのときにある食材を使いながら、子どもたちが好きそうなメニューを考えています。毎回来てくれるご家族もいますね。

お母さんが、ゆっくりコーヒーを飲める時間

ここは職員の目もあるので、子どもたちは遊んで、お母さんはゆっくりコーヒーを飲んで帰られるんです。家にいたら兄弟げんかもするし、お母さんもずっと子どもたちを見ていないといけない。でもここなら、先生が子どもたちと遊んで、お母さんはコーヒーを飲んだり、私たちと話をしたりできる。
忙しいお母さんがちょっとでもホッとできる時間が過ごせたら良いなと思っています。

お母さんを助けちゃりたい

保育士をしていた頃から、お母さんたちが集まれるような場所を作りたいと思っていたんです。障害のあるお子さんのお母さんだけじゃなくて、子育てに疲れている時とか、「ちょっと誰かに話を聞いてもらいたいな」という人とか。

ママ友とは違って、保育士という立場だから聞けることもあるのかなって。私自身も子育て中、仕事を休んで家にいた時期があったんですが、家にずっといて買い物に行くだけだったり、孤独を感じる時があるんですよね。
ママサークルに出ていける人もいるけど、そうじゃない人もたくさんいると思うんです。

だから、「ちょっとお茶する間に、話ができる」そんな場所があったらいいなって。この場所を使って、何かできないかなとずっと思っています。

「困っちゅう」と聞いたら、なんとかしたくなる

今年度から安芸市から委託を受けて、家事・育児のヘルパーにも行っています。お掃除だったり、赤ちゃんを見たり、買い物をしたり。1時間、2時間という限られた時間ですけど、その間に子育ての話をしながら、何か助けられたらなと思っています。

お掃除ができなくて困っている方のお家に行ったこともあります。
「きれいにしたい」「子どもの部屋を作ってあげたい」でも、自分ではなかなかできない。
そこで一緒に片づけたり、キッチンをきれいにしたり。次に行ったとき、前に片づけたところがきれいになっていたら、「頑張っちゅうね。上手にきれいにできちゅうね」って声をかける。そういうことも、大事なのかなと思います。

放課後等デイサービスでも同じで、お母さんから「困っちゅう」って言われたら、「ちょっと待ってよ、なんとかするき」って(笑)。

仕事をしているお母さんにとって、子供を安心して預けられる場所って必要だと思うんです。ただ、放課後デイサービスは利用できる人数に決まりがあるので、「今日はこの子がお休みだから入れるよ」など、職員みんなでやりくりしています。

私一人では、絶対できない

ここまでできているのは、本当に職員のおかげです。私一人では無理でした。
「お母さんたちを助けちゃりたいんだよね」と言ったときに、「分かった」って一緒に動いてくれる。同じ方向を向いてくれている職員がいるから、できています。

子どもたちのことも、すぐに手を差し出すんじゃなくて、少し離れたところから職員同士でアイコンタクトしながら見守ることもあります。連携ですね。私が全部前に出るんじゃなくて、職員に任せるところは任せたい。でも、任せっぱなしにもしたくない。その加減は難しいですけどね。なんか、子育てみたいですね(笑)。

いちばんは、子どもたち

芸西村に来てまだ数年ですけど、少しずつ地域とのつながりも増えてきました。

芸西村の保健師さんや社会福祉協議会の方とは、子どもたちのことでよく連絡を取りますし、学校へ送迎に行ったときには先生方とお話しすることもあります。
いろいろなことをやっていますけど、「いちばんは、子どもたち」。そこは変わらないですね。

子どもたちの小さな変化を見つける。
お母さんが少しだけひと息つける。
地域の方が気軽にカフェに来てくれる。
そんな一つひとつのつながりを、大事にしていきたいです。

取材後記

お話を伺っていると、放課後等デイサービス、カフェ、子ども食堂、地域のイベント、家事・育児支援……と、活動がどんどん出てきます。「そのパワーはいったいどこから?」と思ってしまうほど。

でも、その真ん中にある想いはとてもシンプルでした。

子どもたちの成長に寄り添いたい。
お母さんの「ちょっとしんどい」を軽くしたい。
人と人とのつながりを大切にしたい。

カフェでランチをしたり、コーヒーを飲んで少し話すだけでもいい。
「さん・さん高知」は、そんな小さなきっかけから、人と人がつながっていく場所なのだと感じました。