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特集

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顔が見えるから、気づけることがある。芸西村役場 健康福祉課 保健師 田中さん・吉村さん

赤ちゃんが生まれたとき。
子育てに不安を感じたとき。
健診を受けるとき。
病院のこと、暮らしのこと、誰かに少し話を聞いてほしいとき。
芸西村で暮らす人のすぐそばにいるのが、役場健康福祉課の保健師さんです。

今回お話を伺ったのは、成人保健などを担当する田中さんと、母子保健を担当する吉村さん。お二人の仕事と、全国から寄せられたふるさと納税の寄附金が村の中でどのように活かされているのかについて伺いました。

赤ちゃんから高齢者まで。地域全体をケア

現在のお仕事について教えてください

田中さん
私は保健師として、主に健康増進に関する事業を担当しています。特定健診やがん検診などですね。

また「地区担当」として、西分地区を担当しています。赤ちゃんから高齢者まで、その地域に住んでいる方の相談を受けたり、お家を訪問したりしています。

吉村さん
私は母子保健を担当しています。妊娠・出産、子育てに関する事業や計画づくりをしながら、地区担当として和食地区を担当しています。

芸西村は規模が小さいので、例えば母子保健だけ、成人保健だけという分担ではなくて、一人の保健師がかなり幅広く仕事を持っているんです。大変な部分もありますが、その分、地域全体のことが見えるという良さもありますね。

田中さん
保健師の人数も多くないので、顔を知ってもらいやすいというのはありますね。密な関わりができるのでお互いに
とって良いことだと感じています。

例えば、健診も、去年は受けていたのに今年は予約が入っていない方がいたら、「今年、まだ予約入ってないですけど、忘れてませんか?」って電話してみたり。何年も健診を受けていない方だったら、お家に伺ったりもします。そういう地道な取り組みも大切にしています。

今年度、芸西村では健診受診率45%を目標にしています。芸西村は人口が少ないので、一人受けてくださるかどうかでも数字が変わるんです。「この人どうしてるかな」と一人ひとりを見ながら声をかけています。

つながりを大切に

田中さん
役場に相談に来るというのは、やっぱりハードルが高い方もいます。

赤ちゃんが生まれたら訪問しますし、育児で困っていることがあればお話を聞きに行きます。大人の方でも、精神的にしんどそうだったり、最近どうしているかなと気になる方がいたら訪問することもあります。「困ったことがあった時に相談できる人」として、つながっておくことが大事だと思っています。

吉村さん
母子保健も同じです。訪問して話している中で初めて、「実は赤ちゃんの体重があまり増えてなくて……」という話が出てくることもあります。不安に思っていても、自分からはなかなか言えないことってあるんですよね。

大人でも同じで、「困っているから助けてほしい」と言えない方はいらっしゃいます。だから、こちらからキャッチしにいくことが大事だと思っています。

「虫の目」と「鳥の目」を大切に

お仕事で、大切にしていることは?

吉村さん
保健師の仕事でよく言われるのが、「虫の目と鳥の目」なんです。

一人の方のお話をじっくり聞くのが、虫の目。でもそれだけではなくて、地域全体としてどういう課題があるのか、事業として本当に必要なのかを見る鳥の目も必要です。

例えば、「こういう支援があった方がいい」と思っても、思いだけでは事業にはできません。本当に必要なのかを分析して、事業をやって、また振り返って、次に活かす。その繰り返しを大事にしています。

田中さん
私は、できるだけ地域に出ていきたいと思っています。役場にいるだけでは見えないことがいっぱいあるんです。この地域ではこういうことで困っている人がいるとか、別の地域ではまた違う課題があるとか。

住民さんと話をして、一人でも多く顔を覚えて、つながっておく。事務の仕事もあるので、なかなか時間とのバランスは難しいですけど、そこはずっと意識していますね。

ふるさと納税の寄付金を活用してママをサポート

ふるさと納税の寄附金が使われている取り組み

吉村さん
ひとつは、産後ケア事業です。
出産後1年以内の母子に対して心身のケアや育児のサポートを行い、産後も安心して子育てができるよう支援する事業です。

芸西村では「村の家」という場所で、村が直接運営しています。5か月未満のお子さんとお母さんに来てもらって、お子さんをお預かりしている間、お母さんには少し休んでいただいたり、育児のお悩みの解決ができるよう関わっています。

今年度生まれたお子さんのお母さんには、ランチの利用券もつけています。「ゆっくりできました」「ごはんがおいしかったです」って言っていただくことが多いですね。

それを聞くと、「普段、本当にゆっくり食べる時間がないんだな」と感じます。赤ちゃんがいると、立ったまま食べたり、作りながら食べたりすることもありますよね。人が作ってくれたごはんを、誰かに赤ちゃんを見てもらいながらゆっくり食べる。それだけでも、お母さんにとっては大きな時間なんだと思います。

他にも、5か月以上1歳未満のお子さんがいるご家庭には、親子の交流を目的にした取り組みもしています。2人目、3人目のお子さんというご家庭も多いので、お母さん同士が知り合って、情報交換ができる場にもなっています。

保育園に入れば自然と知り合いが増えますけど、その前って意外と孤独になりやすいんですよね。だから、その時期に同じくらいのお子さんがいる方と知り合えるだけでも安心できると思います。

一度こういう場所につながって、その後、地域の集いの場にもつながっていく。そんな流れができたらいいなと思っています。

妊娠8か月。家に届く「ベビーギフトボックス」

吉村さん
ふるさと納税の寄附金は、赤ちゃんを迎える家庭への支援にも使われています。

妊娠8か月頃にお家へ訪問するんですが、その時に「ベビーギフトボックス」をお渡ししています。中には食器のセットやバスローブ、ガーゼタオル、おしりふき、防災用のミルクなどが入っています。準備がまだ十分できていなくても、これがあれば少し安心できるというものを考えて入れています。

先輩ママや管理栄養士、芸西保育所の保育士さんにも相談して、「こういうものがあるといいよね」と意見をもらいながら内容を考えています。

2人目、3人目のお子さんの場合、毎年まったく同じものだと重なってしまうので、少しずつ内容を変えることもあります。色も、性別に関係なく使いやすいものを選んだりとみんなで考えながらつくっています。

みんなが楽しみながら、健康や福祉にふれる機会を

田中さん
他には、予防接種の費用など、子どもから大人まで、村の皆さんの健康を支える事業にも活用されています。

また、毎年開催している「みのりの王国芸西フェスタ/健康まつり」にも使われています。
健康って大切だと分かっていても、「健康について考えましょう」と言われると、少し堅く感じることもありますよね。イベントを楽しみながら、健康や福祉について身近に感じてもらえるような機会にしたいと思っています。

吉村さん
今年は「よさこい高知文化祭2026」に合わせて、「みんなのアートフェス」も開催する予定です。障害のある方が制作したアート作品を募集して、会場に展示します。来場された方にも参加してもらえるような企画も考えていて、いろいろな方が自然に一緒に楽しめる場にしたいと思っています。

私たちが大切にしているのは、子ども、高齢者、障害のある方など、年齢や立場に関係なく、一人ひとりがその人らしく過ごせることです。健康相談をする場所だったり、誰かと話せる場所だったり、ただ遊びに来られる場所だったり。

健康や福祉を「支援する・される」ということだけではなく、いろいろな人が集まって、交流できるきっかけをつくっていきたいと思っています。

吉村さん
毎年、村の課題を見ながら、「来年度はこんなことをしたいね」「今ある事業を、もう少し充実させたいね」とみんなで話し合います。

その中で、ふるさと納税をどの事業に活用していくかも考えていきます。寄附をいただいているからこそ、できることもたくさんあります。

子どもの頃から「健康」が当たり前になるように

これから力を入れていきたい取り組みは?

田中さん
健診を受けることをもっと身近にしたいですね。芸西村では、大人だけでなく、小児生活習慣病予防健診も県下的に先駆けて行っています。小学4年生、中学1年生、高校1年生が対象です。子どもの頃から、自分の健康を考えることが当たり前になる。

そうしたら大人になった時にも、「健診って受けるものだよね」と思ってもらえるんじゃないかと思っています。子どもが健診を受けているのを見て、「自分も受けようかな」と親御さんが思ってくれたら、もっといいですよね。

健康って、頭では大事だと分かっていても、どうしても仕事を優先してしまったり、「自分はまだ大丈夫」と思ったりするんです。

でも、健康があってこそ、やりたいこともできますから。どうしたら楽しく健康のことを考えてもらえるか。そこはずっと考えていきたいですね。

支える人にも、支えられる人にもなる村へ

吉村さん
これからは、行政だけが何かをするというより、住民さん同士がもっとつながっていけたらいいなと思っています。行政主体の事業には、どうしても限界があります。でも地域の方同士だったら、「これ、いいよ。一緒に行こう」って声をかけ合えるんじゃないかと思うんです。そういう誘い合いや、見守りがもっと広がったらいいなと思っています。

芸西村には、想いを持った人がたくさんいるんです。
子育てをしている若い世代にも、自分で活動をしている方や、「こんなことをやってみたい」という方がいます。そういう方の力も借りながら、いろんな人が関われるようになったらいいですね。

子どもの時は誰かに支えてもらって、大人になったら誰かを支える側になる。でも、また困った時には自分も支えてもらう。小さい村だからこそ、そんなふうに切れ目なくつながっていけたらと思っています。

【取材後記】
お話を伺って印象に残ったのは、「この人、どうしているかな」と、一人ひとりの顔を思い浮かべながら地域を見ているお二人の姿でした。

そして、ふるさと納税を通じて寄せられた応援が、赤ちゃんを迎える家庭への贈りものや、産後のお母さんがほっとひと息つける時間、子どもから大人までの健康を支える事業など、村で暮らす人たちの身近なところに活かされていることも知ることができました。

誰かの「芸西村を応援したい」という想いが、村で暮らす人の安心や笑顔につながっていく。
そして、その想いを一人ひとりに寄り添う支援へとつないでいる、保健師さんたちがいる。

ふるさと納税の、その先にいる人たちの顔が見えたようなインタビューでした。